形成外科専門医の「切らずに若く変える」若返り専門クリニック

切らないたるみ専門の「プライベートクリニック吉祥寺」が創傷治癒の基本、サーマクール後の治療経過と効果を持続させるポイントをご説明いたします。

はじめに

けがや火傷をしたときに心配なことは
 ①機能的障害が残らないか?
 ②傷あとが残らないか?
の2点に集約されます。
外科医はキズやケガを治しますが、傷あとの治療はしません。
機能的には問題なく治っても、ひどい傷あとにコンプレックスを抱えていては真の治癒とは言えません。
私たち形成外科医は、外科医の中でもまさに傷あとまで考えて治療をする専門家です。
『心をメスで治す』とも呼ばれる形成外科は、コンプレックスという心の疾患をメスを用いて治療します。

形成外科と美容外科

人を見る時、最初に目が行くのは顔です。
形成外科の分野でも、顔を対象とした治療は過半数を占め、必然的に形成外科医は顔面の解剖を熟知している必要があります。神経、血管、筋肉、骨、全てを熟知していなければ治療できません。
形成外科医は顔のケガなどの治療経験をたくさん積むうちに、どこをどの様に操作したら顔貌が変化するかが分かる様になります。
また、いかに傷あとを残さずに治療するか、キズの経過に細心の注意を払いながら治療をしています。
その経験と知識があってこそ、正常な人にもメスを入れられるようになります。
美容外科は形成外科の中の一分野で、形成外科認定医しか美容外科学会(JSAPS)の正会員になれません。

形成外科とサーマクール

サーマクールは創傷治癒(キズの治癒の経過)を美容に応用した治療です。
メスこそ必要ありませんが、ケガやヤケド、手術等のキズが治る時の反応を応用していることから、穏やかな美容外科手術をしている感覚で形成外科医は治療をしています。
熱を与えて、どの様な反応がどの位続くか、それはまさに創傷治癒の専門家である形成外科医が扱いに長けていて当然です。

サーマクールの効果の持続期間は、創傷治癒の観点から医学的に説明できます。
以下は形成外科医の観点からの創傷治癒とサーマクールの持続期間について説明になります。

傷あとの経過(正常の場合)

2週間で治るような傷あとの経過です。
通常、縫合した傷の場合は1から2週間で治り、抜糸が出来る様になります。
(顔面は血行が豊富なため創傷治癒が早く、1週間以内に抜糸ができることが多いのですが、それ以外の部位は10日から2週間で抜糸をすることが一般的です。)

一般的に2週間以内で治るキズは跡が残りづらく、正常な傷あとの経過をたどります。
やけどの場合も同様に、2週間以内で治る場合(Ⅰ度、浅達性Ⅱ度)は紫外線による色素沈着に気をつければ跡が残ることはほとんどありません。
2週間以内で治ったキズの傷あとの経過は次のグラフのようになります。

①急性期(~2週間)
縫合部が2週間以内に治癒しないと瘢痕拘縮を形成します。縫合して1から2週間までの期間です。傷が治り抜糸が出来ます。抜糸した直後は比較的綺麗です。

②瘢痕形成期(~2ヶ月)
抜糸をした後は時間と共に傷あとが目立たなくなる・・・わけではありません。
傷が治ってから1ヵ月間程度は、傷を修復するために周囲から線維芽細胞が集まってきて、繊維(コラーゲン)を作り出して傷を固めます。傷を埋めた線維組織は収縮するため、傷が周囲より盛り上がったり、周囲を引っ張ることで引きつれ感が出ます。
この時期に触ると、傷を埋めている繊維の固まりでしこりが触れます。
また、局所的にアレルギー反応が起こる事で血管が増殖し、血流が増加するため、周囲より赤みが増したように見えます。肥厚性瘢痕は必ず出現しますが、程度の違いがあります。
この期間に紫外線に暴露すると、皮膚のバリア機能が低下しているため、色素沈着を起こし茶色く色が残る危険性があります。
一旦色素沈着を起こすと、時間が経ってキズが綺麗になったのに色素沈着の色だけ残って目立ったまま、ということになるので遮光を確実にしなければなりません。

③修復期(~2~6ヶ月まで)
キズが治癒して1、2ヶ月経つと、瘢痕形成期に増殖した繊維は元の正常な組織に徐々に置き換わります。それに伴い硬さは柔らかくなり、盛り上がりがなくなり、周囲との癒着の解除により突っ張りがなくなります。また、増殖した血管も減少し、それと共に赤みもなくなります。瘢痕組織が吸収され、3から6ヶ月で平らな退色調の色になります。
修復期は2~6ヶ月続きます。
つまり、傷あとは6ヶ月は綺麗になる可能性があるため、手術による傷あとの修正は6ヶ月間経過を見てから行うことが最善となります。

傷あとの経過 2(肥厚性瘢痕)

2週間で治るキズは綺麗に治ることが多く、火傷は跡が残らないと言いましたが、逆に2週間以上かかってしまうキズは、硬さと赤さと突っ張り(瘢痕)の状態が長く続くことになります。
特に盛り上がりが強い場合は肥厚性瘢痕と呼ばれます。
また瘢痕が関節等の可動部にあり、皮膚が伸びずに突っ張ってしまうことで動きにくくなった状態を瘢痕拘縮と呼びます。

治癒の過程で瘢痕形成期間が赤い矢印のように延長します。創傷治癒センターは消毒を使わない新しい創傷処置を提案キズを修復して固めるための繊維は集まりますが、繊維がもとの正常な柔らかい組織に入れ替わるまでに時間がかかってしまいます。
正常な組織に必要な血液を供給する血管の進入に時間がかかるため、血行が貧弱な状態が続き、正常の組織よりも繊維が多い白い硬い皮膚(瘢痕)になります。

関節の上などの可動部で傷に張力がかかるような部位の傷では、傷の組織かららアレルギー物質が出てより肥厚性瘢痕が作られやすくなります。

傷あとの経過 3(ケロイド)

ズを修復するための繊維が、傷を埋めるのに必要な量以上に集まってしまうことがあります。
必要な量以上の繊維が集まることで、傷は周囲よりどんどん盛り上がってしまいます。
多くは体質によるもので、ケロイド体質と呼ばれ、喘息やアトピーなどのアレルギー素因を持つ人に多く見られます。ステロイドホルモンの軟膏やテープの貼付、直接の注入、抗アレルギー剤の内服、放射線照射などの治療を行うこともあります。

瘢痕形成期間が続き、元の傷よりも大きくなってしまいます。ます。
6年ほどで治まることも多いともされていますが、経過はアレルギーの程度(体質)によります。

サーマクールの効果の持続期間

①急性反応期(1週間)
施術から2,3日はサーマクールの熱による軽い皮下のやけどのため、火照りと腫脹が生じます。
その後、腫脹の消退により元に戻りますが、皮膚の水分が熱により減少しているため、施術前より逆にハリがなくなった様に感じることがあります。その為に化粧水などによる充分な保湿が欠かせません。

②即時効果(1~2ヶ月)
熱により皮下のコラーゲン繊維が蛋白変性を起こし、羊毛のセーターが洗濯で縮むようにコラーゲン繊維が1~2ヶ月をかけて徐々に収縮してきます。
また、熱により損傷した組織を修復するため、通常のケガの場合と同様に線維芽細胞が活性化し、新たな繊維組織(コラーゲン繊維)を産生し、線維成分の豊富なハリのある皮膚になります。l

③遅延効果(2~6ヶ月)
通常のけがややけどの場合は、正常な組織に置換される期間のため、徐々に硬さ(ハリ)は取れる時期です。
しかし通常のけがややけどと違い、サーマクールの場合は、熱により変性した蛋白コラーゲンが皮下に閉じ込められているため、皮膚にとっての異物となり、異物が徐々に吸収されて排除されるまで繊維芽細胞の遊走やアレルギー反応が持続し、繊維の増生期(瘢痕形成期)が持続します。

6ヶ月を過ぎると、変性した繊維は完全に吸収されてしまうため、通常の傷の修復過程と同じように繊維組織は通常の組織に置き換わり、もとの伸びやすい(たるみやすい)皮膚に戻ります。

サーマクールの効果を持続するために

サーマクールの施術は1年経過すると元の状態に戻るため、1年間隔の施術では同じことの繰り返しをしているだけの持続時間しか期待できません。

もちろんそれでも効果は得られますが、1回当たりのサーマクールの効果の持続期間をより延長させる事が可能なのです。

サーマクールの引き締め効果は創傷治癒の反応を応用したものですが、敢えて傷あとが残る傷の治療をすることで、傷あと(コラーゲン繊維が豊富な瘢痕)が存在する期間を持続できます。

傷やヤケドが傷あとを残すかどうかは、2週間で治るかどうかにかかっている、と書きましたが、1週間キズの治りが遅くなるだけで、何十倍も長い時間傷あとが残ることになります。
言い換えれば、キズが治るまでの時間をわざと遅くすることで、傷あと(=繊維が豊富でたるみにくい組織)の状態を維持できるようになります。

(効果が出ている期間に重複して治療することで、効果の持続期間が赤矢印のように延長する)

サーマクールの場合は、効果が完全に取れる前、つまり半年から1年の間にに繰り返すことにより、キズ(瘢痕)に追加してキズを加えることになるために、『治るまでに長時間を要したキズ』と同様の状態を人工的に作ることができます。

繰り返してサーマクールを受けるのであれば、6~12ヶ月の間に受けたほうが良い、というのはここから来ています。